超短編小説 トモコとマリコ

超短編小説を中心とした短い読み物を発表しています。

2021-07-01から1ヶ月間の記事一覧

七夕

今日は七夕だから、干し星をミルクで戻す。

化石

先生、「アコースティックギター」と思われる木片も一緒に見つかりました。「ということは、この化石は「詩人」の一種だね」

かくれんぼ

同じ房の囚人に「この部屋でぼくとかくれんぼしよう」と言われた時は「何言ってるんだろうこの人」と思ったが、もう四時間経つのに彼はどこにも見つからない。

いびつな蝶

羽の形が何だかいびつな蝶が飛んでいて、捕まえてみるとひらがなの名前が書かれていた。どこかの子どもが春を少し担当したらしい。放して空を見上げる。日は暖かい。

怖い

「顔の下から光当てると怖いねー」と、子どもたちが首吊り死体に懐中電灯を当てて遊んでいる。

×

先日、地球と月の間に巨大な「×」が発見された。今、月の向こうに「=」が形成されつつある。誰か見に行く勇気はあるか。

胎教

「血しぶきは胎教に良くない」と身重の妻が言うので、妻がいっしょの時は、絞め殺すことにする。

苦い

「何だか苦いぞ。体どこか悪いんじゃないか」と、味噌汁を飲んだ父が心配そうに、「出汁のおじさん」に声をかける。

機械

近所の幼稚園には、ちょうど園児がすっぽり入れるくらいの太さのパイプがついた大きな機械が置かれていて、「いじめ すっきり」と書かれた紙が貼られている。

どうしても弟が欲しくてぼくは、父さんの目を盗んで金庫から取り出したぼくの設計図を、盗まれやすい場所にそっと置いた。

先生

今月の締め切りが近いので、編集者である私は動物園に行き、先生から檻越しに原稿を受け取る。

口を開けて

「はい、じゃあ、おおーきく口を開けて」医者はそう言うと、私の口の中に向けて猫じゃらしを構えた。

ドーナツ

皿の上のドーナツの前に線香が供えられている。誰か穴に落っこちたらしい。

屋台

夏祭りの屋台の中に、「kiss」とのれんに書かれた屋台があって、派手な化粧のおばさんが、ガムを噛みながら客を待っている。時間帯によって値段が違っていて、花火が打ち上がる時間が一番値段が高いのが、何か腹立つ。