超短編小説 トモコとマリコ

超短編小説を中心とした短い読み物を発表しています。

2021-05-11から1日間の記事一覧

夕方、点滴を抱えた一匹の蛙が、田んぼの群れの中へ消えていくのを見た。「あいつ、今日で最後なんだよ」じいちゃんが言った。ぼくらは二人で耳を澄ませた。鳴り響く蛙たちの声を聴いてじいちゃんは涙を拭っていたが、ぼくにはどれがどれだかわからなかった。

我が校の給食室の棚には「愛」とラベルの貼られた黒い壷があって、中には透明のどろどろした何かが入っており、それを先生の分の給食に混ぜるのが決まりになっている。「昔は子どもたちの方に混ぜてたのよ」上司のおばさんは複雑そうな顔で言う。