超短編小説 トモコとマリコ

超短編小説を中心とした短い読み物を発表しています。

2012-01-01から1年間の記事一覧

ジョークグッズと午後の四畳半

することも、会う人も、口ずさむ歌もない、空白のような午後に、湿った畳にあぐらをかいたまま何気なく金玉を持ち上げて、裏側を見てみたら、皺と皺の隙間に 「これはジョークグッズです。」 と書かれてあった。

雀と桜

四月の蒸し暑い午後のことである。川辺の桜並木は、大勢の花見客で賑わっていた。地面に広げられた色とりどりのビニールシートの上では、無数の人間がひしめき合い、桜を見ては笑ったり泣いたりしていた。 いや、桜を見ている者はむしろ少数だったかもしれな…

肖像と毛

図書委員のYくんが修学旅行に持参した3枚のブリーフには、ナポレオン、勝海舟、シド・ヴィシャスの顔がそれぞれ、へたくそな刺繍で縫いこまれていた。 Yくんの母さんは両手の指に刺し傷をたくさんこしらえた。 けれどやっぱりYくんは風呂の時間、変なところ…

象と穴

下着泥棒が戦利品を隠すために掘った穴に象が落ちて、首の骨を折って死んだ。 いなくなった母を捜すため、サーカスから逃げた象だった。