あの定食屋のおばさんは、ぼくが「死にたい」と言うと、「知らねーよそんなの」と言ってご飯を無料で大盛りにしてくれる。
「オカエリ、オカエリ」「オツカレサマ、オツカレサマ」と連呼するインコの前で、離婚届に判を捺す。
毎日、同じ時間に、同じ祖母の遺影をスマホで撮ってSNSにアップしている。高評価がすごくつく日とそうでもない日があって、面白い。
「今度の実験も、わくわくしますね」と、研究員が所長に話しかけながら、手慣れた手つきで作り上げていく、三百本目の首吊り縄。
駆除してもらった蜂の巣の中、女王蜂の部屋のパソコンの検索履歴に「蜂 ヒト 恋愛 映画」の文字。
自宅で死にたいと言って病院から家に帰ってきた夫が、布団の中から手を伸ばし、私の靴下の穴に指を突っ込んで、穴を拡げてニヤニヤ笑っている。
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