超短編小説 トモコとマリコ

超短編小説を中心とした短い読み物を発表しています。

暑中見舞い

 昔の友人から突然暑中見舞いのハガキが届いた。
 消印は「海の底」で、スタンプはタコの吸盤だった。
 昔から住み家も仕事もふらふら定まらない風来坊だったが、額からちっちゃな提灯が生えた可愛い赤ん坊を抱いているこの写真を見る限り、ようやくあいつも落ち着いたらしい。
 今年の年末ジャンボが当たったら、潜水艦でも買って遊びに行こう。

痕跡と目撃者

 ホットケーキを焼き上げて皿に載せ、テーブルに置いたところで、ハチミツを切らしていることを思い出した。
 何かかわりになる物ないかな、と冷蔵庫の中を覗いていた時、背中の方で何かがピカッと光った。
 咄嗟に振り向いたが何もいない。
 外の天気も台所の蛍光灯も異常はないようだ。
 首をかしげながらテーブルの上にふと目をやると、まだ温かいホットケーキに、ちっちゃなミステリーサークルが残されていた。
 やられた。
 いつの間に入ってきたんだろう。
 明日から猫でも飼おうかな。