2017-05-27 増築 トモコからきいた話 大人になって自分の家を持った。 金が貯まるたびに、家を上へ上へと増築していった。 夜空の星を少しでも近くで見てみたかったのだ。 ある時ふと気がついた。 星に近づくたびに、接着剤のにおいが強くなっていく。
2017-05-20 繭 クミコからきいた話 朝、駅に行くと、3番線に巨大な繭が横たわっていた。 いつもの列車が蝶になろうとしているようだ。 奇妙な静けさの中、4番線にやってきた列車が、いつもの面子を飲み込んだあと、ため息をつきながら扉を閉めた。
2017-05-13 ヌード トモコからきいた話 裏通りで何だか晴れ晴れとした様子のガイコツとすれ違った。 ガイコツのやってきた方へ歩いていくと、女の髪や皮や指輪が無造作に突っ込まれたゴミ箱を前に、コンビニのアルバイトが呆然としていた。
2017-05-13 凪(母) クミコからきいた話 夏休みのある日、縁側で昼寝をしていた。 一時間くらい経った頃、家の中が急に蒸し暑くなったような気がしてふと目が覚めた。 水を飲もうと台所に行くと、お母さんが風鈴を食べていた。