トモコとマリコ

超短編を中心とした短い読み物を発表しています。

蛸の絵

 漁港に遊びに行った帰り、蛸を丸ごと一匹買い、生きたまま発泡スチロールの箱に詰めてもらった。
 家に帰る車中で、一緒に遊びに行った娘が、バッグに入れておいた色鉛筆をなくしたと騒ぎ出したので、途中文房具屋に寄って新しい色鉛筆を買っていった。
 家に着き、蛸の入っている箱の蓋を開けると、蛸は八本の足に娘の色鉛筆を握りしめたまま息絶えていた。
 驚いて固まっていたら、娘が「あっ」と叫んで箱の蓋を指さした。
 蓋を裏返してみると、そこには、今まで読んできたどの絵本にも載っていないくらい鮮やかな竜宮城の絵が描かれていた。
 あれは蛸が実際に見た風景だったのか、それとも蛸が死ぬ前に見たかった風景だったのか、それともただの落書きだったのか。
 蛸を茹でている間、ずっとそんなことを考えていた。

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猫の粒

 飼いはじめたばかりの猫が逃げてしまった。
 猫の粒を水で戻す時に、水の分量を適当に量ってしまったせいだろう。
 もったいないことをした。
 猫の粒、高かったのに。
 「本物に近い」ってやつ買ったから。
 本物知らないけど。

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副業

 彼女の大きなおっぱいに顔を埋めると、左のおっぱいから誰かの話し声がぼそぼそと聞こえてきた。
「ごめんね、左も貸しちゃった」
「……」
「優しそうなおばあちゃんだったから……」
 彼女のおっぱいだから俺がどうこう言えることじゃないけど、出来ればこんな副業やめてほしい。

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笑う剥製

 夫に浮気がバレそうな予感がしてきたので、面倒なことになる前に浮気相手を剥製にして、クローゼットの奥に隠すことにした。
 表情やポーズは私が好きに決めていいと彼が言ってくれたので、彼の笑顔が好きだから剥製も笑顔にしてみたのだが、最近そのことをちょっと後悔し始めている。
 やっぱり、クローゼットを開けるたびに、闇の奥に笑顔がぼんやり浮かぶのはどこか気味が悪い。
 次は普通の表情にしようと思う。
 まぁ、浮気がバレないようにするのが一番いいんだけど、それはそれってことで。

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先生のお話

 夏休みだからといってだらしない生活をしてはいけませんよ。
 神様に捧げられる人以外は夜更かしはやめましょうね。
 ではまた休み明けに!

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