超短編小説 トモコとマリコ

超短編小説を中心とした短い読み物を発表しています。

 世界に一本しかない木。とても甘くて爽やかで、おもちゃのような色と形をした実を生らす。実の中には種がなく、増える気配のない木である。根っこをよく調べてみると、地中に埋まった一つの頭蓋骨から生えていることがわかった。研究者によれば、この木は、頭蓋骨の見ている夢が具現化した形らしい。とても楽しい夢を見ているのだね。シャクッ、と実をかじると、風もないのに葉が揺れた。