超短編小説 トモコとマリコ

超短編小説を中心とした短い読み物を発表しています。

 恋人に指摘されて知ったのだが、俺の背中には「名前を書く欄」があるらしい。「私の名前、書いていい?」恋人はおかしそうな顔でそう言ったが、俺は「待ってくれ」と答えた。名前を書く欄か。普通なら持ち主の名前を書くのだろうな。持ち主、俺の持ち主。恋人か、親か、それとも俺自身か。誰だ?俺って誰のものだ?さんざん悩んだ後、俺は俺の名前を書く欄に、飼い犬の名前を書くことにした。「お前のものなら本望だよ」そう言いながら飼い犬を撫でると、飼い犬は大きなあくびをして俺の手をぺろっと舐めた。