超短編小説 トモコとマリコ

超短編小説を中心とした短い読み物を発表しています。

 ベッドにいるのはわたしひとりだが、ふとんからはみだしている足は五本も六本もある。足をうごかしてみるとぜんぶ同時にうごくから、どれがわたしの足なのかわからないが、どの足もつやつやの爪が生えていたり、たくましい血管がうきでたりしているので、どれがわたしの足でもかまわないと思った。足をうねうねうごかしてタコの気分をあじわっていると、腹をすかせた飼い犬が部屋にはいってきて、飯をくれとせがむので、足のほうを見るようにうながし、うねうねうごかしてやったら、目を丸くしておどろいていた。かわいい。