超短編小説 トモコとマリコ

超短編小説を中心とした短い読み物を発表しています。

怒号

「絶対に入らないでください」
 そう釘を刺された分娩室から、妻の苦しそうな叫び声とともに、
「絶対に出すな」
 という医者の怒号が聞こえてきた。

 何だか大変なことになっている。
 居ても立っても居られず、少しでも様子を見ようと長椅子から立ち上がった時、ふと気づいた。

「出すな」
 って、どこから?