超短編小説 トモコとマリコ

超短編小説を中心とした短い読み物を発表しています。

瓶と風

 死んだ恋人を背負い、森へ捨てに行く。長い道程の中で、疲れては休み、そのたびに恋人をめくり、少しずつ読んでいく。途中で拾ったコーラの瓶を栞がわりにしている。恋人を読むと、私の知らないことばかりで、寂しくなったり、ほっとしたりする。恋人を閉じ、再び歩き始める。めくられた恋人の胸や青白い手足が、湿気を帯びて少し丸まっている。森は遠く、恋人もまだまだ読み終わらない。ときどき風が踊って、草と果物のにおいを運んでくる。コーラの瓶に、森へと続く道が、まっすぐに歪んで映っている。