超短編小説 トモコとマリコ

超短編小説を中心とした短い読み物を発表しています。

2022-03-15から1日間の記事一覧

遺影

父の遺影に使う写真を、カツラをかぶっている物にするかカツラを脱いだ物にするかで母と揉める。

パン屋

その町外れのパン屋には、毎日一つ限定で、人間の形をしたパンが売り出されており、うつろな目をした人たちがやってきては、頭だけとか右腕だけとかをもいで買っていく。

きらきら

「わー、手がきらきらー!」「きらきらだねー」お互いの手を見せながら笑う母子の足元に、おびただしい数の、羽をむしられた蝶が蠢いている。

「どんな現状でも、命を粗末にするものじゃない」と猟師に諭され、その虎はとぼとぼと、廃屋の床の間の掛け軸の中に帰っていった。