超短編小説 トモコとマリコ

超短編小説を中心とした短い読み物を発表しています。

2021-11-01から1ヶ月間の記事一覧

絶滅

「はーい、絶滅でーす」と言いながら、何かをぐりぐり踏みつぶす子どもたち。

「飯!」怒鳴る父の前に、怯える母がそっと電池を置く。

ぐるぐる

うちの両親は時々、仏間の真ん中に方位磁石を置いて、針がぐるぐる回って止まらない時必ず、「お墓参り行こっか」と誘ってくる。

テレビ

竹やぶに不法投棄されているテレビに、時々、「なんでやねん」と表示されているのを見る。

地獄

孫がまた悪さをしたので、そんなに悪いことばかりしてると地獄に落ちるよ、と言うと、孫は「いいよ」と答えた。どうしてさ。「地獄にはお母さんがいるもん」

間違えた

「お前が死ね」「ごめん、間違えた」「お前が死ね」「間違った(>_<)気にしないで」「お前が死ね」「すみません誤送信です」同じ日に三回、それぞれ違う友人たちからそんなメールが届いた。

相合い傘

絞首台の柱にふと目をやると、内側に、俺が殺した男と殺せなかった女の相合い傘が彫られている。

腹の膨らんだ人形を手に、女の子が泣きながら産婦人科に入っていく。

殺虫剤

ホームセンターの殺虫剤売り場で、目を輝かせたおじさんが、「ゆっくり死んでいくのないの、ゆっくり死んでいくやつ」と店員に尋ねている。

炭火焼き

「炭火焼き」と書かれたのぼりが、火葬場に。

回転寿司

ふと入店した回転寿司のレーンに、寿司に混じって位牌が回っているが、必ずウニとセットで回っているので、生前ウニが好きだったのかな、と思う。

体重計

体重計に乗ったら液晶に「無理」と。

ぼくから

「ぼくから進化したよ!」というPOPがつけられた猿のぬいぐるみが置かれている地球人売り場。

感電

ぼくの姉は電柱になった。沢山勉強して電柱になった。姉だった電柱には小さな膨らみが二つ生えていて、触るとすべすべして冷たい。電柱になることは姉の昔からの夢だったのに、祝福できないぼくがいる。見上げると電線に小鳥。感電死すればいいのに、なんて…

お供え

あのお墓にはよく、百点のテストがお供えされていましたが、段々と点数が下がっていき、三十点を下回った辺りで、すっかり見なくなりました。お墓自体も、今ではあの有様です。

指棚

友人の部屋の指棚の、指輪がはめられたまま並べられた指を見て、俺なら指輪外して売るのに、こいつ、やっぱり金持ちだなぁ、と思う。

男が息絶えたのを確認すると、首吊り縄は白蛇へと戻り、明け方の森の中へするすると消えていった。

おもちゃ

子ども部屋に入ってきた母親が、「おもちゃはぁ、ちゃんとぉ、片づけなさいねぇ」と言いながら、足の裏にくっついてきた小さな骨片をつまみ、窓辺に並んだ骨壺に放り込む。

覗き穴

今朝は髪の毛をセットする時間がなくて、脳天の覗き穴を隠さないまま登校した。なるべく目立たないようにしていたのだけれど、休み時間、うっかり突っ伏して寝ていたらその隙にクラスメイトの女子に穴を覗かれ「エッチ!」と笑われた。もう学校に行きたくな…

たった今自分が出てきたそこに深々と礼をしてから、赤ん坊はおぎゃあと産声を上げた。

「朝になったら糸を抜いてあげますからね~……」また今夜も、母の膝の上で、ぼくはまぶたを縫われている。

希望

電池を入れるところがない人間に会うのは、久しぶりじゃのう……。

免許

動物園に行き、猿を見ていたら、猿山の隅で一匹の猿が、人間免許の問題集を一所懸命解いていた。なつかしいなぁ。免許取ったら呑みに行こうぜ。

集合写真

卒業アルバムのどのクラスの集合写真を見ても、同じ骨壺を抱えた女が写っている。

ふと入った喫茶店で、ぼんやりコーヒーを飲んでいると、自分以外の客が全員、葬式の打ち合わせをしていることに気づく。

遠足

みんなで遊園地に遠足に行った時、着ぐるみが死刑囚の人にだけ風船を配っていて、ずるいなぁ、と思った。

何もしない

「何もしない、何もしないって」「えー、絶対何かするもん」「何もしないって、ちょっと寄ってくだけだから」そんなやりとりをしながら、若いカップルがホームセンターの刃物売場に消えていった。

人形

フリーマーケットで人形を買い去っていく女の子の背中に向かって、店主のおばあさんが「笑ったら……お寺……」と叫んでいる。

タイムカプセル

二十年ぶりに掘り返したタイムカプセルから、先日自殺した××君の遺書が出てきた。

一個は

「せめて一個は家族に」ということで一個だけもらった息子の缶詰、の前にケーキやごちそうを並べて、今日は息子の誕生日パーティー!