やっとのことで回り始めた乾燥機の中から、チャリチャリという音が聞こえてくる。 ああ、そうか。 付け爪が外れてしまったんだ。
夕方の鐘の美しい音色が、茜色の町に響いている。 人通りもまばらな裏通りを歩きながら私は、ポケットに忍ばせていた彼の耳を取り出し、染み込ませるように鐘の音を聞かせてあげる。 部屋で眠る彼の夢が少しでも美しいものになるように祈りながら。
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