夏、家の前の道の上でびちびち跳ねている金魚を見ながら、雨降れ、と心の中で祈っている。
人類が滅亡した後の荒野で、信号機たちが、自分たちの本当の色を灯し始める。
ベビーカーに一個のツナ缶を載せた女と、一匹のマグロが、水族館の水槽越しに見つめ合っている。
担架に載せられた墓石が救急車に運び込まれる。
少年のフーセンガムが月と同じ大きさまで膨らんだ時、月からの使者が針を持って現れた。
高名な書道家が、自身が書いた「蚊」という文字の前で、恍惚の表情を浮かべながら全身を掻きむしっている。
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