超短編小説 トモコとマリコ

超短編小説を中心とした短い読み物を発表しています。

ネズミ

 天井から時々カリカリと音がする。ネズミがすみついてしまっているらしい。いや、ちょっと嘘をついた。「時々」ではない。正確には、テレビの朝のニュース番組の占いコーナーで、蟹座が一位になった時だけ、決まって天井からカリカリと音がする。たぶん、ネズミじゃない。

 歯医者さんの顔が蟻そっくりだった。小さいけれど額には触角らしきものまで。訊いてみると、お母さんが改心した蟻だとのこと。うーん。「改心した」って、何か、嫌な言い方だな。蟻より歯医者さんの方が正しいみたいで。