超短編小説 トモコとマリコ

超短編小説を中心とした短い読み物を発表しています。

つぎはぎ

 三日前の夜、天井裏に薬を撒いて、長年棲みついていた鼠たちを皆殺しにした。
 一昨日の夜、天井裏で大勢の何かが、一心不乱に念仏を唱えていた。
 昨日の夜、天井から白い灰がこぼれ落ちてきた。
 今日の夜、天井から紙切れが落ちてきた。
 明日はない、とのことだった。

妥協

 結局、私は鼻だけもらうことになった。
 本当は目が欲しかったけど、仕方ない。
 どこに置いとこうかな、鼻。
 変なにおいのするところに置いたりしたら、タカハシ君から苦情が出たりして、口を持っていった子に文句言われるかもしれない。タカハシ君、そんなことで文句言う人じゃないとは思うけど。
 ……ライバルが多いとこういうことになるのか。

かじる

 あなたのお墓を少しかじったら、香水と煙草の味がしました。
 あなたもあちらで大人になったんですね。
 あなたがおばけを怖がっていた姿がいつまでも可愛くて、あなたの去った家の廊下の蛍光灯は切れたままにしておいたのだけど、新しいものに取り替えようと思います。

花と蝶

 今日も公園通りは蝶々の死骸で埋め尽くされ、朝の光にりんぷんがキラキラと輝いている。
 花屋に勤めている私のお姉ちゃんは、もう三ヶ月も家に帰っていない。
 昨日届いた手紙によると、仲直りはまだまだ先らしい。
 今日も私はお姉ちゃんの無事を祈って、折り紙で作ったサナギを燃やす。