2017-06-03 痕跡と目撃者 トモコからきいた話 ホットケーキを焼き上げて皿に載せ、テーブルに置いたところで、ハチミツを切らしていることを思い出した。 何かかわりになる物ないかな、と冷蔵庫の中を覗いていた時、背中の方で何かがピカッと光った。 咄嗟に振り向いたが何もいない。 外の天気も台所の蛍光灯も異常はないようだ。 首をかしげながらテーブルの上にふと目をやると、まだ温かいホットケーキに、ちっちゃなミステリーサークルが残されていた。 やられた。 いつの間に入ってきたんだろう。 明日から猫でも飼おうかな。
2017-05-27 増築 トモコからきいた話 大人になって自分の家を持った。 金が貯まるたびに、家を上へ上へと増築していった。 夜空の星を少しでも近くで見てみたかったのだ。 ある時ふと気がついた。 星に近づくたびに、接着剤のにおいが強くなっていく。
2017-05-20 繭 クミコからきいた話 朝、駅に行くと、3番線に巨大な繭が横たわっていた。 いつもの列車が蝶になろうとしているようだ。 奇妙な静けさの中、4番線にやってきた列車が、いつもの面子を飲み込んだあと、ため息をつきながら扉を閉めた。