超短編小説 トモコとマリコ

超短編小説を中心とした短い読み物を発表しています。

夢かと

 窓枠にカエルが一匹、ざあざあ降っている雨を見上げながら、しきりに自分のほっぺたをつねっていた。カエルが夢かと疑うほどいい雨なのか、この雨は。カエルは喜び勇んだ様子で、窓枠を飛び出し、雨を浴びながらどこかへ消えていった。私は雨で乾かない洗濯物をかごに詰め、傘をさしてコインランドリーに出かける。大型の乾燥機に洗濯物を放り込み、小銭を入れる。長椅子に腰かける。乾燥機の回る音と雨音とが、競り合うように両耳をはたいて落ち着かない。ふとランドリーの窓に目がいく。雨がざあざあ降っている。ためしに自分のほっぺたをつねってみる。するとはっと目が覚めてそこには青空が、なんてことにならないかな、と思ったが、なんてことにはならなかった。さっきのカエルは今頃どこで何をしているのだろうか。乾燥が終わるまで残り35分。