超短編小説 トモコとマリコ

超短編小説を中心とした短い読み物を発表しています。

 濡れたハンカチで口をおさえ、早歩きで通りを行く女、真っ赤な顔の女、のやってきた方には真っ赤な夕日、にはよく見れば口づけの跡、夕日の熱ですっかり焦げ跡になってしまっているが、それは確かに女の唇の跡、いくつもいくつも残されている、そしていつもより赤い夕日、いつもよりゆっくり沈む赤い夕日、夕日の言葉は知らないし、赤い顔の女はもう行ってしまったから、夕日と女との間に何があったのか、は想像するしかない、から俺は思い切り下衆なことを考えてにやにやしてやろう、他の奴らはどうだ、真っ赤な夕日がゆっくり沈んでいく、真っ赤に、俺たちの顔をいつもより真っ赤に染めながら。