超短編小説 トモコとマリコ

超短編小説を中心とした短い読み物を発表しています。

擬態

 至急連絡!

 の文字とともに、誰かの携帯電話の番号を羽に走り書きされた真っ白な蝶が、川辺の草むらでのんびりと、花の蜜を吸っていた。

 今日は天気がいいから、オフィスの窓を開けっぱなしにしていたのかもしれない。
 今日は天気がいいから、飛び回って遊び疲れた白い蝶が、偶然迷い込んだオフィスの、白いメモ帳の上で一休みしていたのかもしれない。
 それで、どちらもうっかりしてて、さらさらっと書いちゃって、ふらふらっと飛んでっちゃって……。

 いずれにせよ、これを書いた人、今頃、大丈夫かな。

 今日はこんなに天気がいいのに、怒られたりしたら、ちょっとかわいそうだ。蝶も。