超短編小説 トモコとマリコ

超短編小説を中心とした短い読み物を発表しています。

そっか

 ある日、お母さんが知らない男の人を連れてきた。
「新しいお父さん?」
「違うよ」
 お母さんはその男の人を水槽で飼い始めた。

 数日後、またお母さんが知らない男の人を連れてきた。
「新しいお父さん?」
「そうだよ」
「よろしくね、××ちゃん」
「……ああ、はい」
「どうしたの、××?」

 いや、水槽のお父さんの方が、新しいお父さんよりもずっとかっこいいのが、なんか、嫌だなぁ、と思って。
 ……あ、違う。
 水槽の方はお父さんじゃないんだ。
 そっか。

「なんでもない」