超短編小説 トモコとマリコ

超短編小説を中心とした短い読み物を発表しています。

蝶を逃がす

 今朝も悲しい夢で目が覚めた。
 深くため息をつき、認めたくなかった言葉を心の中でつぶやく。
 やっぱり私たちは合わないみたいだ。
 パジャマを脱ぎ、胸を開き、心臓のファスナーを開けると、白く美しい蝶がのろのろと這い出てきた。
 何か言いたいのに何も浮かばない。
 黙って窓を開ける。
 蝶は太陽の光を全身に浴びながら、大きく羽を広げ、どこかへ飛び去っていった。
 からっぽの心臓に休日の風が冷たく染みこんでいった。