超短編小説 トモコとマリコ

超短編小説を中心とした短い読み物を発表しています。

雨と新品

 突然降り出した雨の中、家路を駆けていく。

 雨漏りの音が頭の中に響いてうるさい。

 昨日市場で安く買った頭だから、どこかうまく繋がっていないのかもしれない。

 前まで使っていた頭は上司の子どもに譲ってしまった。

 昔誕生日に親が買ってくれた良い頭だったけど、やむをえない事情があったんだ。

 雨宿りできる場所を探して一息ついて、雨漏りする頭を点検してみる。

 聞いたこともないメーカーのタグがくっついている。

 たくさんの蛇が集まって塊になって、人の横顔のようになっているロゴマークが描いてある。

 気味が悪い、やはり安い頭なんか買うべきじゃなかった。

 黒雲が遠くまで途切れなく低く垂れこめている。

 雨漏りの音を聞いていると、どこへ向かって帰ればいいのかもよくわからなくなってくる。

 タグをちぎり道端に放る。

 家のタンスにしまってあるよく乾いたバスタオルのことを、ふいに思い出す。

 ため息を一つ吐き、ますます激しくなる雨の中、再び家路を駆けていく。