超短編小説 トモコとマリコ

超短編小説を中心とした短い読み物を発表しています。

やみ夜

 月も星もないやみ夜の下を歩いていたら、なんだか食欲を誘う良い匂いが、空からふわふわ降りてきた。

 ふと見上げると、夜空の真ん中でバターの塊が溶けている。はっと気がついたときには、じゅうじゅうと香ばしい音を立てるやみ夜に向かって、まっ逆さまに落ちていた。