超短編小説 トモコとマリコ

超短編小説を中心とした短い読み物を発表しています。

海と歯車

 春の日の明け方に、街に面した大きな海が、しんとして凪いでいた。
 海に潜って調べてみたら、海を動かす歯車にくらげが挟まり死んでいた。
 くらげをペンチで引っ張り出すと、歯車はゆっくり動き出し、海のあちこちに波が萌え、魚も鳥もほっとしていた。
 海から上がり、くしゃみを一つした後、死んだくらげを、不憫なやつだ、砂浜の隅に埋めてきた。

 やがて街が目覚め、人々が家から出てきた。
 ずぶ濡れのまま朝の通りを歩く私を、みんながじろじろくすくす笑っていた。
 寂しい気持ちで部屋に戻った。