超短編小説 トモコとマリコ

超短編小説を中心とした短い読み物を発表しています。

月と針

 図書館の奥で、古い時代の月の写真を見つけた。あまりに無防備で驚いた。

 その日の夜、久しぶりに窓を開けて月を眺めた。至るところに注射器が刺さっている。私の知っている月だ。

 図書館で見た写真が信じられない。試しに、空想の中で注射器を抜いてみたが、後味の悪い結果にしかならなかった。