超短編小説 トモコとマリコ

超短編小説を中心とした短い読み物を発表しています。

髭と白衣

 母さんが入院した。どうしてと尋ねても、父さんもおばあちゃんも口をつぐんでいる。こっそりお見舞いに行っても、何だかんだと理由をつけて会わせてくれない。
 仕方がないので隙を見て母さんがいる病棟に忍び込み、その病室を探した。やっと母さんの名前が書かれたドアを見つけたところで、部屋の中から大きな笑い声がするのに気がついた。
 笑い声は立派で朗らかなのに、とても嫌な感じがした。急に帰りたくなってきた。そっとドアを開けて中を覗くと、髭を生やしたお医者さんたちが、ベッドの上に置かれた泥の塊をちぎりながら笑っていた。