超短編小説 トモコとマリコ

超短編小説を中心とした短い読み物を発表しています。

象とラジオ

 死にかけた象はラジオを受信する。本当の話だ。小学生のとき、近所のお姉さんと真夜中の動物園に忍び込んで、死にかけた象で落語を聞いたことがある。途中で象が死んでしまったから、落語のオチがわからなかったのをよく覚えている。

 お姉さんとは今でも連絡を取っている。時々デートもする。ホテルに行きたくない日は、どちらからともなく象の思い出を語る。そしたらその日は何もせずに帰る。そういう決まりなのだ。そしてその決まりが私にはとてつもなく心地よい。