2013-06-01 影と思い出 マリコからきいた話 ぼぅっと道を歩いていると、いつの間にか影だけの遊園地に迷い込んでいた。影だけの観覧車が夕日を遮りながらぐるぐる回っていた。影だけのベンチには影だけの迷子が泣いていた。私が何か声をかけようとすると、影だけのマスコットがやってきて影だけの風船を手渡した。影だけの迷子はかすかに笑い、私はもう元の場所に戻っていた。笑い声の影が、私の足下の新聞紙に巻き取られながら、風に飛んでいった。 創作企画サイト『TRAUMENTS』内企画 「Egg Heights」参加作品