超短編小説 トモコとマリコ

超短編小説を中心とした短い読み物を発表しています。

家賃

 誕生日に、砂浜できれいな巻貝の貝殻を拾った、自分へのプレゼントとして家に持ち帰った、が、使い道がなかった、結局十五分で元の場所に帰ってきた、砂浜に投げ戻そうとした時、ふと、この貝殻に、ヤドカリが住みついてくれないかな、と思いたち、ヤドカリがいそうな場所を適当に見繕って、そこに貝殻を置いて帰ってきた、あの貝殻にヤドカリが住んでくれたら、家賃に小魚でももらおうかな、あ、でも毎月わざわざ小魚だけもらうの微妙に面倒くさいな、あ、そうだ、家賃として海の話でも聞かせてもらおうかな、その方が楽しそうだ、そんなことを考えながら家路についた、靴の中は砂でじゃりじゃりだったけど、近年では一番充実した誕生日だった。