かぜにのって、じゅわきのかたちのくもが、あおぞらをながされていく。
かすかにふるえながら、じりりり、じりりり、とけたたましくベルのおとをならしている。
だれかでてやれよ、だれかでたほうがいいんじゃない、みんなくちぐちにそういうが、だれもでかたがわからない。
じりりり、じりりり、かぜにのって、じゅわきのかたちのくもが、あおぞらをながされていく。
じゅわきのかたちのくもは、かぜにのって、ちきゅうをぐるりとまわった。
そのあいだ、だれかでてやれよ、だれかでたほうがいいんじゃない、せかいじゅうのひとがくちぐちにそういったが、だれもでようとはしなかった。
ひこうきなんかをつかえばあるいはでられたかもしれないが、でたあとになにをきいて、なにをいえばいいのか、さっぱりわからなかったし、そのせきにんもおいたくなかったのだ。
じゅわきのかたちのくもは、けっきょく、ちきゅうをいっしゅうして、もとのばしょにもどってきた。
そのしゅんかん、ベルのおともぴたりとやんだ。
ひとびとはほっとむねをなでおろした。
だれがなんのためにかけてきたでんわだったのか、すこしのあいだ、いろいろなぎろんがかわされたが、やがてそれもすぐにわすれさられた。
そのとし、ちきゅうでは、れいねんよりもすこしおおくひとがしんだ。