超短編小説 トモコとマリコ

超短編小説を中心とした短い読み物を発表しています。

月になる

 夜中にこっそりベッドを抜け出し、夜空に寝そべり、黄色い毛布をすっぽりかぶり、満月のマネをしてふざけていた姉は、やがて夜の闇に少しずつかじられて、半月になり三日月になり、とうとう跡形もなく消えてしまった。
 次の日の朝、病院の人は、誰もいないベッドのシーツを換えながら、「たまにあるんだ、こういうこと」とため息をついていた。