超短編小説 トモコとマリコ

超短編小説を中心とした短い読み物を発表しています。

猫と列車

 満員電車に揺られていたら、どこかから猫の鳴き声が聞こえてきた。
 乗客がざわざわしながら辺りを見回しているが、どうも私の足元に声の主がいるらしい。
 そっと下を見てみると、子猫が2匹、不安そうに私を見上げていた。

 白と灰色のまざった子猫が2匹、右の靴下には白い猫、左の靴下には灰色の猫。
 どうやら昨日棚にしまった時、違う靴下同士を組み合わせてしまったらしい。

 ますます大きく鳴き始めた子猫たちの声を聞きながら、自宅の方で生まれた子猫たちのことと、アパートの管理人への言い訳を考えて、朝から少し憂鬱になった。