超短編小説 トモコとマリコ

超短編小説を中心とした短い読み物を発表しています。

目覚めと蜂

 目覚めると、隣に蜂が寝ていた。

 美しい蜂だった。おはようと声をかけたが、もう死んでいた。

 カーテンの向こうで日が昇り、蜂の影が急に濃くなった。

 起き上がり、カーテンを開け、窓の外を見た。雲がゆっくり流れていた。窓に映った私の胸には、小さな穴が開いていた。手足も冷たくなっていくし、もうすぐ私も死ぬのだろう。

 ゆうべのことは何も思い出せなかったが、きっといい夜だったのだと思う。