超短編小説 トモコとマリコ

超短編小説を中心とした短い読み物を発表しています。

ザンパンのお姉さん

 台所に知らない女の人が立っていた。顔がなくて、顔の部分には大きな空洞が開いており、中はどこまでも闇だった。「ザンパンのお姉さんよ」母が言った。調理や食事で出た残飯を、お姉さんの顔に投げ込むのだという。十五歳の夏、ぼくの初体験の相手は、このお姉さんだった。