超短編小説 トモコとマリコ

超短編小説を中心とした短い読み物を発表しています。

父と冷蔵庫

 酔った父が冷蔵庫の中に入っていってしまった。風邪をひくと思って扉を開けたら、父は三つ残っていた卵たちと麻雀卓を囲んでいた。呑気なもんだ。人が心配しているのに。眠かったのでそのままにして扉を閉めた。翌朝、すっかり冷え冷えになった父が冷蔵庫から出てきて、「あいつらイカサマばかりしやがる、ろくなひよこにならねえ」とぶつぶつ文句を言っていた。朝食に卵かけご飯を食べようと、昨晩父と戦った卵のうち一つを取り出し、割ると、黄身が双子だった。「二筒か。どうりで……」と父。うるさいなあと思った。