超短編小説 トモコとマリコ

超短編小説を中心とした短い読み物を発表しています。

お兄ちゃんの日

 隣家の表札には、家族全員分の名前が書かれていて、その下にはあみだくじの線が引かれており、辿っていくと、一つだけ猫の顔のマークに行き着くものがある。線の形は毎日更新されていて、隣家には毎日違った模様の猫が出入りしている。奥さんが猫の日などに回覧板を持っていかなければならなかったりすると正直ちょっと面倒くさい。今朝、ガレージの前を通りかかると、ピカピカのよく手入れされたバイクの上に、猫背をさらに曲げてうなだれている黒猫を見かけた。ああ、今日はお兄ちゃんの日なんだ。