超短編小説 トモコとマリコ

超短編小説を中心とした短い読み物を発表しています。

 ふと気がつくと、いつの間にか、たましいが腐りはじめてしまっていて、胸の辺りから漂ってくる腐臭や、常に周りを飛び回っている蝿の群に悩まされている。むかしはあんなにぴかぴかだったたましい。いつから腐りはじめてしまったのだろう。あの時か、あの時か。考えても考えても答えは出ない。あるのはたましいが腐りはじめている、という事実だけだ。一匹の蝿が、まるで恋人の胸に飛び込む女のように、たましいめがけて勢いよく飛んでくる。それをしっしと手で追い払う時、むしょうにさびしい気持ちになる。なぜだろう。考えても考えても答えは出ない。腐りはじめたたましい。これから冷蔵庫の中で暮らしたら、少しはましになるだろうか。