超短編小説 トモコとマリコ

超短編小説を中心とした短い読み物を発表しています。

もちもち

 今日の夕日、何だか、美味しそうだ。もちもちしている。かじったらどんな味がするのだろう。そんなことを考えながら夕日を眺めていたら、いつの間にか周りには人や動物がいっぱい集まっていた。夕日を見つめながら舌なめずりをする犬、フォークとスプーンを構えているおばさん、ごくりと唾を飲み込むカラス。今日の夕日が美味しそうだと考えているのは私だけじゃないらしい。そのままじりじりと夕日に近づいていく私たち。と、ようやくそれに気づいたのか、ゆっくりと沈みかけていた夕日がとつぜんびくっ、と体を震わし、慌てた様子でそそくさと地平線の向こうへ沈んでいってしまった。中途半端に食欲を刺激されたお腹をさすりながら、解散した私たち。噂によると、その日は和菓子屋さんのみたらし団子が飛ぶように売れたらしい。