超短編小説 トモコとマリコ

超短編小説を中心とした短い読み物を発表しています。

はらわた

 理科室にある鹿の剥製の、目玉がわりのビー玉が、キラキラ光っている。キラキラ光っているのは、ビー玉が濡れているせい。鹿の剥製が、泣いているのだ。剥製が泣くのは、決まって夕日の綺麗な放課後。窓の外に、校庭を走る運動部員がいる時。いっしょに走りたくて泣いているのか、夕日を見て感動しているのか、それともぜんぜん別の理由があるのか。それは誰にもわからない。けれど剥製が泣いている時、そっとそのおなかを撫でると、無いはずのはらわたのぬくもりが、掌になぜか感じられるのだ。