超短編小説 トモコとマリコ

超短編小説を中心とした短い読み物を発表しています。

セーター

 夢の中で、落ち葉を踏む音が近づいてきたら、友だちが来てくれている証拠です。ある秋に死んだ友だちが来てくれている証拠です。天国の土産話をたくさん持って。私たちは落ち葉のじゅうたんの上に寝転がって語り合います。夢の外でたくさん疲れた私に、友だちは愉快な話を色々聞かせてくれます。天国で暮らしているのに、友だちは相変わらず高い所が苦手だそうです。相変わらずお母さんが編んでくれたセーターを着ているそうです。天国はかすかに桃の香りがするそうです。そんなことを話しているうちに朝がやってきて、私たちはまたねと言って別れます。ベッドから目覚めると、気分はとても爽やかです。なのに、なぜかほっぺたには涙の乾いた跡が残されていて、すこしかゆいのです。