超短編小説 トモコとマリコ

超短編小説を中心とした短い読み物を発表しています。

きらきら

 あたまのなかが、あのひとのかおでいっぱいだったので、ぬいばりをもったままふとんへはいり、ゆめのなかでひとつひとつわっていくことにした。ゆめのなかはあんのじょうあのひとのかおでいっぱいで、わらったかお……ないたかお……おこったかお……こまったかお……こまらされたときのかお……ひとつひとつはりをさして、ようしゃなくパンパンとわっていく。われるときにおもいでのかけらみたいなものが、こなのようにふわっととびだすので、それをすってしまうともともこもないようなきがして、ずっとかたてではなをつまんでいた。やがてゆめのなかは、しぼんだあのひとのかおでいっぱいになり、さいごにのこったのは、あのひとのさいごのかおだった。わたしをもうすきじゃなかったときのかおだった。ゆっくりはりをさすと、しゅぶ、とへんなおととともにかおはしぼみ、こなじょうのおもいでをなかにのこしたまま、わたしのてのなかにおちてきた。わたしをもうすきじゃなかったときのかお。そのかおも、わたしはすきだったんだ。くちゃくちゃにまるめて、おもいきりじめんにたたきつけたしゅんかん、めがさめた。ないていた。はなみずがたれていた。てのひらに、なにかきらきらしたものがくっついていた。