超短編小説 トモコとマリコ

超短編小説を中心とした短い読み物を発表しています。

にょうぼとお日様

 今日は風が吹くたび、太陽がやけにぶらぶら揺れるので、よく目をこらすと、太陽のてっぺんに、りんごみたいなヘタがのびていて、それが風でちぎれそうになっていた。とっさに両手を器の形にして、いつ太陽が落ちてきてもいいようにと待ち構えていたが、その日は何とか無事に、地平線の向こうへと沈んでくれた。晩飯を食っている時、明日からどうすんの、とにょうぼが訊くので、気づいちまったからには明日も俺がああしているしかないだろう、と少しいばって答えると、にょうぼはそっと軍手を手渡してくれた。そう言うと思ったよ、これがありゃもしお日様があんたの手に落ちてきても、熱くないだろ、と。ああ、にょうぼよ。ほんとに気が利くにょうぼよ。優しいにょうぼよ。おでこが広くてかわいいにょうぼよ。ああ、にょうぼよ。俺は明日からいちんちじゅう機嫌よく、太陽が落ちてくるのを待つことができそうだ。