超短編小説 トモコとマリコ

超短編小説を中心とした短い読み物を発表しています。

酔い

 テーブルの上にうっかり酒をこぼした。愛用しているペンが酒びたしになり、ペンはすっかり酔っぱらってしまった。ふらふらとテーブルの上を這い回り、メモ帳を見つけると、「俺の前世は船乗りだったんだ」と筆談で伝えてきた。なるほど、それで、「海」という字を書いた時だけ、やけにインクが濃く出るのか。酩酊したペンはそれっきり何も言わず、ほんのり全身を赤くして寝てしまった。翌日は二日酔いのためか、字が何となくボキボキしているのが可笑しかった。今度海へ行く用事があったら、こいつをシャツの胸ポケットにさしていってやろうと思う。