超短編小説 トモコとマリコ

超短編小説を中心とした短い読み物を発表しています。

睡蓮と女

 焼き芋の屋台だと思って覗き込んだ荷台の木箱には、濁った水と睡蓮と、睡蓮の間に浮かぶ女の死体が揺れていた。
 わずかに開いた死体の口からは、良い酒の香りが漂っていた。
「ありがとうございます」
 屋台を引いているおばさんはそうつぶやいて、月明りに目を細めながら路地の向こうへ消えていった。