超短編小説 トモコとマリコ

超短編小説を中心とした短い読み物を発表しています。

 男の手紙が手錠になり、男の声が格子になり、台所の隅で男に抱かれながら、女は雨の朝の卵を茹でている。

(私の細い肩が、ほどけた髪が、ぼやけた影となり、町外れの川のせせらぎにほつれている。)

 女の窓は男の眼差しだけで、女の世界は男の背中だけで、襖の陰でふてくされながら、寄辺ない夜の貝が砂を吐いている。