2016-06-25 錠 マリコからきいた話 男の手紙が手錠になり、男の声が格子になり、台所の隅で男に抱かれながら、女は雨の朝の卵を茹でている。 * (私の細い肩が、ほどけた髪が、ぼやけた影となり、町外れの川のせせらぎにほつれている。) * 女の窓は男の眼差しだけで、女の世界は男の背中だけで、襖の陰でふてくされながら、寄辺ない夜の貝が砂を吐いている。