首の長いきりんのぬいぐるみを、娘は持っていました。
きりんの長い首には、何か芯のような物が入っていて、私たちが何もしなければ、首は自然にぴんと立つようになっていました。
ある日家に帰ると、娘が私の書斎の前のドアに立っていました。それは娘が妻に内緒で私に何かおねだりをする時の、決まり事のようなものでした。
娘は後ろ手に何かを隠したまま、どこか大人びた表情で、私の顔をじっと見つめていました。私は大げさな動作で周りを窺い、小声で娘に尋ねました。
「ママは?」
「お風呂」
「よし、じゃあ今のうちに何があったか言ってごらん」
娘は黙って隠していた物を、私の前に差し出しました。それは首の長いきりんのぬいぐるみでした。
しかし、いつもなら真っ直ぐそそり立っているはずの長い首は、娘の細い腕に絡みつくように、だらりと垂れ下がっていました。
私が何か言う前に、娘が私に尋ねました。
「アイス、食べていい?」
私は答えました。
「いいけど、どうして?」
「棒が要るの」
「何のために?」
「お墓」