孤独な彫刻家が、亡くなった妻をモデルにした彫像の腹に、泥を塗り固めて膨らませ始めた

三日前、あいつがぶち込まれた懲罰房の外壁に、三日前から、じっととまっている蛾の羽の模様が、あいつの目に似ている

ビニール袋に入れて、寺の庭の隅に埋めた自分の髪の毛を、その尼は時々掘り返しては、匂いを嗅いでいる

ほろ酔いで夜のオフィス街を歩いていると、それぞれのビルの拷問部屋の灯りがぽつぽつと点いていて、みんなお疲れ、と思う

服の内ポケットから出てきた、ぐちゃぐちゃのベビーカーを見て、「あー、やなこと思い出したー」と、神様がうずくまった

鼠の結婚式のスピーチを頼まれ、数年前、我が家の飼い猫が死んだ時の話から原稿を書き始める

「どうだい、美しいだろう」と、その狼の幽霊は、博物館に展示されている自分の剥製を前に、恋人に言った

もうだめかな、と思い始めたのは、月の兎がおむつを穿き出したのを見た時

ドレスを脱いだ彼女は流暢な猫語で私に「さようなら」とささやいて夜の闇へ消えていった

家に帰ると、室内が荒らされていて、現金や通帳がなくなり、冷蔵庫に豚ホルモンが増えていた

その職人によって、魚座は刺身にされた

猫一匹の命と引き換えに、スマホの充電が完了した

今朝は詩が降ってるから消しゴム持っていきなさい

ある日空に突然現れた高評価ボタンと低評価ボタンを見て、一人の兵士が、低評価ボタンに向かって戦闘機で突っ込んでいった

廃寺の仏像の掌の上で、ある夏の雷の午後、一匹のカタツムリが悟りを得た

小銭が手に入るたび、そのホームレスは、自殺の名所の近くにある電話ボックスの中に、十円玉を数枚置いていく

銃剣を担ぎ、疲労困憊した犬たちの隊列が、巨大な蚤の彫像の前をとぼとぼと通り過ぎる

「雨か」生け簀の底から、蛸が脚を一本ちょいと上げて板前に合図すると、店内のBGMがジャズにかわった

その貴婦人の指で潰されたいと願った虫たちが、彼女のピアノの鍵盤の上にずらりと横たわっている

造花を詰めた籠を背負って、老人は腐った大地を目指し旅立った

その寺の仏像の耳はだんだん腐っていっている

私の涙を拭ってくれようとした掃除機が、私のほっぺたを吸ってしまい、思わず笑うと、掃除機も笑った

パパとママのことが大好きな子どもは、みなその発電所に送られてしまう

スゴイネ、ニンゲンハ、ヘイキデ、ホシニ、ナマエヲ、ツケルンダネ

事故の後、目覚めたベッドの上で、自分に繋がれた点滴袋の中で、金魚が泳いでいるのを見ていたら、看護師の恰好をした骸骨が、「綺麗でしょ」とカタカタ笑った

その狸は私が仕掛けた罠の中で息絶える直前、鏡に化けて、私に私の顔を見せた

猫を作る機械がリーズナブルな価格になってから、この辺りも野良猫が増えたなぁ

刑務所で食事を食べるたびに、この食事を作っているのは生き別れたお袋なのではないか、と囚人がひとり、思い悩んでいる

保養地のビーチで、長針も短針も秒針もみんな外した古時計が、じっくりと太陽の動きを眺めている

その綿菓子は雲たちの間で大きな話題になった